障害者を支援する NPO を運営していて感じること

障害者を支援する NPO を運営していて感じること

皆さんこんにちは川崎良太です。これまでは私の人生を振り返りてくてくの代表になるまでの経緯を思いお話ししました。そんな中で障害者の自立とか自分で選ぶことといったような話をしてきましたが、今回はその自立についてより詳しく、そしてそういった生活を目指していく人を支援する難しさとお話しできればと思います。

まずあなたにとっての自立とは何ですか?自分のことを全て自分でできること?誰にも頼らず生きていくこと?人に迷惑をかけずに生きていくこと?きっとこういったことが頭に思い浮かぶのではないでしょうか。その観点からいくと障害者は自立できないことになります。ではもう少し頭を柔らかくして考えてみましょう。携帯電話やパソコンを使うには電力会社があり、そこを管理している人たちが日夜働いてくれているから私たちはたくさんの情報を得ることができています。 これは一見屁理屈に聞こえるかもしれないですが、世界で生きる人々はたくさんの人の支えによって毎日豊かな生活を送ることができています。


では障害を持った人たちはどうでしょうか、自分で身の回りのことができない、例えば靴下が履けないと言った時にどうしたらいいでしょうか。答えは簡単です人に靴下を履かせてと伝えて介助をする人が、それをしてくれれば良いのです。健常な人たちがコンビニでパンを買うような事と同じです。

自分ができないこと、できたとしてもとても時間がかかってしまうことを人にお願いするということです。この考え方を使えば障害者は自立できるということになります。これまでの考え方だと自分で身辺のことやトイレをすることができない重度な障害者は自立できないということになっていましたが考え方を少し変えるだけで自立できることになります。


さらにわかりやすくまとめている文章があるので引用したいと思います。
全国自立生活センター協議会HPより”


私たちが考える自立とは
1人の人間として、その存在を認められることです。
それは、ばかにされたり、いないものとして扱われるのでもなければ、守るべき者やヒーローとされることでもありません。自分の人生においてあらゆる事柄を選択し、自分の人生をじぶんなりにいきていくことです。
自立生活とは、どんなに重度の障害があっても、その人生において自ら決定することを最大限尊重されることです。選択をするためには選択肢の良い点・悪い点を知らされ、あるていど経験も必要です。一部を選択したり全てを選択しないという選択もあります。


自立生活とは、危険を冒す権利と決定したことに責任を負える人生の主体者であることを周りの人たちが認めること。また、哀れみではなく福祉サービスの雇用者・消費者として援助を受けて生きていく権利を認めていくことです。
基本的には、施設や親の庇護の元での生活という不自由な形ではなく、ごく当たり前のことが当たり前にでき、その人が望む場所で、望むサービスを受け、普通の人生を暮らしていくことです。


障害があるというだけで能力がないものとして馬鹿にされることでもなく、いつまでも子供のように責任を持てないものとして扱われることでもなく、必要以上に神格化し、何か特別な能力があるものとして扱われることでもありません。 一人の人間として存在を認められるということです。

<世界初の障害者情報誌『リハビリテーションギャゼット』より>
「自立(生活)とは、どこに住むか、いかに住むか、どうやって自分の生活をまかなう
か、を選択する自由をいう。それは自分が選んだ地域で生活することであり、ルームメートを持つか一人暮らしをするか自分で決めることであり、自分の生活 - 日々の暮らし、食べ物、娯楽、趣味、悪事、善行、友人等々 - すべてを自分の決断と責任でやっていくことであり、危険を冒したり、誤ちを犯す自由であり、自立した生活をすることによって、自立生活を学ぶ自由でもある。」
この定義によれば、経済的自立が達成されなくても、自分で自分のことができなくても自分で決断を下して責任をとることができればよいのです。たとえば、障害が重くて仕事に就くことができなければ年金や手当を活用すればよいし、身辺のことが自分でできなければ介助者に指示してやってもらえば、それで自立は達成できるのです。従来の福祉ではとうてい自立できないと思われていた障害者の自立ですが、当事者サイドの考え方をとり入れれば可能なものとなったのです。
身辺のことができなくても自分で決め、その意志を伝えることはできるのです。細かい金銭管理が難しい人は、CILにサポートを頼むことができれば、その障害者は自立している障害者といえるのです。

http://www.j-il.jp/about-rinen

といったような文章があります。このように文になっていると当たり前のことのように感じますが、残念ながら障害者にはまだまだその権利があるとは言えません。

今この文章を読まれているあなたが、例えば明日から県外に行きそこで生活していこうと思えば、家を借りる資金と生活をつなぐ仕事があればできることになります。しかし障害者は生まれ育った地域にいたとしても施設や病院に生活の場を移すことが当たり前とされ、住みたいところに住むこともできないのです。話をテーマに戻すと障害者の支援をしていて難しいと感じること、それは障害を持っている人が、自分は障害持っているからやってはいけないことがあると思っていることにほかならないと思います。

建物に階段があったり制度が発展していなかったり難しいことはたくさんありますが、障害者自身が他の健常者と変わらないような生活を送ってはいけない、送れないと思っている、そう思わされてきたことが支援を難しくさせていると思います。
ではどうしたらこの状況を改善していけるでしょうか。その答えは経験を積んで、自信を取り戻していくことです。自立生活センターでは、自立生活プログラムといったプログラムを自立を目指している障害者に向けて行なっています。 内容としては、調理実習や外出プログラム、介助者との関係、制度の使い方等個別や集団で行います。なぜ大人になって簡単な調理の実習をしなければならないのでしょうか。

そこに気づいたあなたはとてもいいセンスがあると思います。だって大の大人が中学校でやるような調理実習をするわけです。おかしいですよね。でも私たちはそれをしなければならない。普通の子供だったら4,5歳になれば台所に行き大人の料理の手伝いをしたり、勝手に目玉焼きを作ってみたり、ホットケーキを焼いてみたりします。それが必ずしもうまくできるとは限りませんが、焦げたり苦かったりした経験を生かして次はまた上手になっていくのです。しかし障害者はどうでしょう。とりわけ生まれた頃から重度の障害を持っているものは、そういった子供の頃の経験が全くありません。

しようと思っても親や施設職員に危ないからと言って止められて、経験を積むことができないのです。分かりやすく説明をすると、すべて奥さんに料理等を作ってもらっていた男の人が奥さん亡き後、出来合いのものばかり食べるといったような具合です。
人は経験により色々なことを知り学び、生活に活かしています。電車の乗り方も同じです。健常な人達は、子供の頃友達同士で隣町に遊びに行ったりした時に、初めて電車を使います。その時切符の買い方を間違えたり、色々な失敗もあるでしょう。そんな経験を通して大人になったらいとも簡単に電車に乗り目的地までたどり着くことができるのです。


しかし障害を持っていると一人でどこかへ行くということができません、させてもらえませんというほうが正しいのかもしれません。なぜさせてもらえないのかと言うと、途中で怪我をしたり何を何かあったらどうするんだ、という優しさゆえからかもしれません。しかしこの優しさや管理されてきたことによって障害者は生きる力を奪われているのです。経験さえ積んでいれば、なんだってできたことがあるかもしれない。しかしその経験をさせてもらえないことで分からないことがたくさんある。分からないから自分にはできないと思ってしまって自信が出ない。その自信を取り戻すために、プログラムをします。この中で大事になってくるのは失敗してもいいということです。人は失敗の中から多くを学びます。そして子供の頃にする失敗というのは、年齢のおかげで大体許されることが多いです。しかし大人になると人は失敗することをすごく怖がるようになります。それは障害を持った人も同じで、失敗することは悪いこと、恥ずかしいことという風に捉えてしまいます。ですがこれまで経験していなかったことを失敗するということは当たり前ですから、失敗していいんですよということを伝えることが大事です。

と言ったように障害者が自立をする上で障壁となっているのは、様々な社会問題とともに、障害者自身が自信を持てない自信を持たせてもらえなかったというところが大変重要です。

自立生活センターのような NPO 法人がやれる業務量というのは限界がありますが、それでも一人でも多くの障害者が本来持てているはずであった自信を取り戻して、いろんなことに挑戦できるような環境を整えていく必要がこれからさらに求められていると思います。

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