
目次
はじめに
筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)や重度脳性まひの方にとって、社会という外の環境に出て働くということは非常に困難なことです。
そのため、これまでは身体的に重度な障がいを持った方たちは働きたくても社会に出て満足に働くことも難しかったことがほとんどです。
しかし、こういった身体的な問題に関わらず何らかの事情があり自宅から出て働くことが困難な方たちが、遠隔操作でロボットを使うことで社会に出て働くという取り組みが注目されるようになってきました。
今回は、重度障がい者がロボットを遠隔操作することで社会に出て働くという新たな仕事の形である「DAWN」について紹介していきたいと思います。
遠隔操作ロボットを使用したカフェ「DAWN ver.β」とは?
今までは、その身体機能面における障がいから就労することが難しかったALSや重度脳性麻まひの方もロボットを遠隔操作することで社会参画することができる可能性があるカフェが「DAWN ver.β」です。
正式な名称は「分身ロボットカフェDAWN ver.β」といい、(公財)日本財団、(株)オリィ研究所、ANAホールディングス(株)が、(一社)分身ロボットコミュニケーション協会と共同で2018年11月26日から12月7日までの期間限定でこのカフェを開催しました。
主に外出することが困難な障がい者の方がロボットを遠隔操作して注文を受けたり、会計を行ったりなどの接客を行います。
使用されているロボットは「OriHime-D(オリヒメ・ディー)」と呼ばれるオリィ研究所が開発した身長120cmのロボットを使用されました。
「OriHime-D(オリヒメ・ディー)」とはどういったロボットなのか?
OriHime-Dは、下半身は二足歩行ではなくそれほど自由はききませんが、上半身が比較的自由に動くことができ、500グラム程度の物ならば自由に運ぶことが出来ます。
お客さんとコミュニケーションを図るときはカメラで視覚認知し、マイクとスピーカーを利用することでお互いの会話を行えるようになっています。
つまり、重度障がい者であっても自宅にいながら遠隔操作でロボット動かし、会話を行うことで接客をすることができるというわけですね。
ただ、移動には少し制約があり、フラットな床面に貼られたテープを用いて移動を行います。
ロボットはテープ上のみ移動を行えるので、それほど難しい操作を要求されることはなく、接客される側もある程度動きを予測することが出来ます。
実際に操作を行うときは、視線の動きを感知することで操作を行う「OriHime eye」を用いて操作を行います。
視線の動きは身体の動きが重度に制限されている方でも比較的保たれていることが多い機能なので、ALSの方たちがコミュニケーションを図る手段として実際に利用されていることが多いです。
この眼球運動の動きさえあればALSの方でも遠隔操作でロボットを操作することができ、接客を行うことができるという仕組みです。
当初は、ロボットに単純に「ここで止まる」ということや「ここまで動く」といったようにプログラミングされていただけでしたが、実際に接客をしてみるとうまくコミュニケーションを図ることが出来ず、様々な問題点が出てきたようです。
そのため、ただ単に自動でロボットを動かすことだけにするのではなく、臨機応変に手動で対応できるようにしていくことがトラブルの回避につながっていったようです。
DAWN ver.βはどのような反響があったのか

期間限定という形で開催されたカフェでしたが、今でも大きな反響があるようです。
大きな反響があった背景には、どんなに重度な身体障がいがあっても接客を通して社会に貢献でき、働くことができるという幸福感を得られるためではないかと思います。
今までも視覚的な入力によるコミュニケーション手段は構築されてきていましたが、ただヴァーチャルの世界でゲームを行ったり、映像を楽しんだりするといった個人的な娯楽出る場合が多く社会に貢献するという形ではありませんでした。
しかし、重度な身体障がい者がこのような接客を通して健常者とコミュニケーションを図りながら社会に貢献するという取り組みは、今までにはない取り組みでとても画期的であると思います。
私たち健常者にとっても新鮮で斬新な取り組みであり、重度な身体障がい者の方にとっても社会生活の幅が広がっていく可能性を秘めていると思います。
まとめ
社会生活が豊かになってきて、どんなに重度な身体障がい者であっても就労し社会に貢献できる可能性が広がってきています。
しかし、やはり働くということはお互いがコミュニケーションを通じて成り立つものであり、そこには人と人のつながりが重要だと思います。
分身ロボットカフェDAWN ver.βが大きな反響を呼んだのは、重度な身体障がいを抱えていても遠隔操作ロボットを使用することで自由に働くことができるからではなく、障がい者と健常者が同じ目線でコミュニケーションを図り、互いにつながりをもてるからではないかと思います。
今回は期間限定の取り組みでしたが、今後より一層新しい働き方の取り組みが確立されていけば良いなと思います。