
目次
はじめに
人はコミュニケーションを図るときにほとんどが言葉を発声することで会話を行います。
そのため、声が聞こえづらい環境や聴覚障がいの見られる方にとっては発声することで音声を認識することが困難なので、コミュニケーションを図ることが難しい場合があります。
今回はそんな音声認識の問題を解決する手助けになるかもしれないAlterEgoについて紹介していきたいと思います。
人と人のコミュニケーションはどのようにして行われるのか
人は、言語を音声として発声し耳で聞き取ることで相手の意図を理解し、コミュニケーションを図っています。
そのため、音声言語での理解が難しいと相手の意図を理解することはどうしても困難になってしまいます。
しかし、言語で発声する前に人は頭の中でどのように相手とコミュニケーションを図ろうかとある程度思考してから言語という音声という形で相手に意図を伝えていきます。
ということは、音声言語で発声する前にすでにどのようにコミュニケーションを図るのかということを脳の中で考えているということが言えます。
音声言語で絶えず相手とコミュニケーションを図りながら会話を行い、その会話の途中においても常に脳の中で考えながら会話を行っているのです。
聴覚障がいの方は音声言語での理解が難しいのか

聴覚障がいの方は、音声として言葉を聞き取ることが難しいもしくは聞き取ることができないので、音声から感じる相手の意図の理解は難しくなります。
しかし、聴覚障がいの方が健聴者と全く違う脳の構造をしているのかというとそういうわけではなく、脳の機能としてはほとんどの場合が健聴者と同じです。
そのため、音声を耳で聞き取り音声言語から相手の意図を理解することは難しいですが、脳の中で自分の考えを言語化することは健聴者と同じで可能であるということが言えます。
言葉を音で理解し音声として発声することは難しいけれども、脳の中で相手の意図を理解して考える機能は健聴者と同じということですね。
AlterEgoとはどういったシステムを利用した機器なのか

AlterEgoは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)で開発された音声を発声することなく頭の中で考えるだけでコミュニケーションを図ることができる機器です。
具体的にどのようなシステムなのかというと、耳から顎にかけて機器を装着するウェアラブルデバイスと、コンピューティングシステムの組み合わせで構成されていて、ウェアラブルデバイスの中の電極で顔から顎にかけての神経筋の動きに伴う電気信号を受け取ることで装着している方が音声認識を行うことができ、さらに自分の考えを相手に伝えることができるといったシステムです。
実際に自分の頭の中で言葉を思い浮かべるように会話することをイメージすると分かりやすいのですが、頭の中で考えた言葉を相手に伝えたり逆に相手の考えた言葉が理解できたりするということですね。
人間が自分の話したいことを言葉として考え、実際に発声せずに頭の中で会話をするとき、他の人がその考えている様子を見ても何を考えているのか理解することはできません。
そのため、外見上は何も変化は見られませんが、実はこのときに耳から顎にかけての筋肉に脳からの微弱な電気信号が伝わっており、装着しているウェアラブルデバイスはこの電気信号を受け取ることができます。
受け取った電気信号は、ある特定の信号と言語との相関関係を学習させたニューラルネットワークを通して言語として変換されます。
ウェアラブルデバイスにはこういった電気信号を受け取る電極のほかに、骨を介して音を聞き取ることができる骨伝導ヘッドフォンも内蔵しているので、例えば周りの騒音がうるさい場所であってもコミュニケーションを図ることができます。
AlterEgoはどういった方に適応可能なのか
音声を介さなくても相手とコミュニケーションを図ることができるので、様々な方に対応することが期待できるのではないかと思います。
以下に適応可能な方についてまとめていきたいと思います。
聴覚障がいがみられる方
聴覚障がいの方は、音声を耳で聞き取ることが難しいので言語を音声として発声することも困難になってしまいます。
そのため、脳の中で理解することはできるけれども、相手から音声として言葉を受け取り相手に意図を伝えることが難しくなってしまいがちです。
しかし、AlterEgoを利用すればどんなに騒がしい場所であっても健聴者の方と円滑にコミュニケーションを図ることができるようになるのではないかと思います。
発声することが難しい方
聞き取りが難しいために発声することが難しい方もいますが、耳は聞こえているけれども言葉を発声することが難しい方もいらっしゃいます。
こういった発声のみに障がいがある方にとっても便利な機器ではないかと思います。
騒がしい場所で仕事をしている方
健聴者の方であっても、あまりにも騒がしい場所では音声でコミュニケーションを図ることが難しい場合があります。
また、水の中も音が相手に伝わりにくいのでコミュニケーションを図ることが困難です。
そのため、騒音が激しい空港・鉄道での会話や飛行機内での会話、あるいは水中での作業や消防隊員などの保護マスクを使用している場合などにも活用することができるのではないかと思います。
ただ、機器を実際に耳から顎にかけて装着しなければならないので、ヘルメットなどの頭部と顔を密着させる必要がある場合は、装着することが難しいかもしれません。
まとめ
聴覚障がいがみられる方や、耳は聞こえるけれども発声することが困難な方にとって音声でコミュニケーションを図ることは困難です。
また、健聴者であっても騒音が激しい場所で仕事をしている場合は、言葉での会話を行うことは相手の声が聞き取りにくくコミュニケーションを図ることが困難です。
そういった場合にAlterEgoを用いることができれば、耳から顎にかけてデバイスを装着し、頭の中で考えるだけで相手とコミュニケーションを図ることができるので、聴覚障がい・発声障がいの方や健聴者の方にとってもとても便利なシステムとなるのではないかと思います。
まだまだ現状は使用されている場面は少ないですが、今後普段の日常生活においても使用することができるようになってくると良いですね。